徒然サブカル随筆

気の向くままにサブカルについて綴ります

毒も皿まで食らえば美味

「幸色のワンルーム」という漫画がある。
今度実写映画になるらしい。ジャニーズ主演で。
まぁ実写映画の方は正直あまり興味はないのだが、漫画は個人的に読んでいた。


何気なく「幸色のワンルーム」で検索してみたら、何故か炎上のタグが付いていて、そこでこの漫画を巡る騒動を知った。

この漫画、「実際にあった事件」を元ネタに作られていると思わざるを得ない時期にネット上で発表された漫画であった。(作者は関連性を否定している)

この漫画がネットに発表される数ヶ月前に、埼玉で少女が2年間誘拐、監禁される事件があった。
犯人は少女に「お前は捨てられた」などと洗脳して、家に帰るという選択肢を消すよう仕向けていた。(ネットに書いてあることの受け売りなので間違ってるかもしれない)

んで、この漫画の何が炎上したかというと、「誘拐犯と少女が恋愛関係になる」など、事件を肯定するかのような内容でお話が進んでいくのだ。


もちろん、実際に起きた事件は許されるものではない。
ただ、だからといって、元ネタにするなとまで言ってしまうと、創作というものを全て否定してしまうことになりかねないと私は思う。


今回の幸色のワンルームについては、漫画と実際の事件では随分と状況が異なる。
作者も実際の事件を参考にしていない(というのは流石に苦しいと思うので言い訳だと思うが)と言っている通り、外枠として「誘拐犯と少女」を使ってはいるものの、その中身は作者のオリジナルとしてしっかり作られている。中身が面白いかどうかは主観だと思うので何も言わないけど。

別に誘拐犯は少女を強姦もしていないし、監禁すらしていない。少女が家に帰りたいと思わなくなるように洗脳なんてこれっぽっちもしていない。恋愛関係になるというところがけしからんというならば、正確にいうと恋愛関係ですらない。「逃げ切ったら誘拐犯と結婚する。警察に捕まったら死ぬ」という約束をしたというだけだ。
どちらかというと、そう約束せざるを得なかった少女と誘拐犯の歪んだ関係を描いているに過ぎない。

そして何よりも、この漫画。別に誘拐を正当化なんて1つもしていない。第1話で既に少女が誘拐犯と共同生活をすることに「我ながらどうかしてる」と自嘲めいた台詞を吐いている。

これが実際の事件と同じように、誘拐犯が少女を騙くらかして監禁する流れだとしても私は批判はしないだろう。
だって、何も誘拐を肯定してないのだから。そういう流れになるなら必然的に悪として誘拐犯を描くだろうし。

多分批判している人は、外枠だけ見て不謹慎だと嫌悪感を抱いたんだと思う。
でも、それを言われてしまうと創作は成り立たなくなる。


フィクションは毒があるからこそ面白い。
起承転結のない話なんてちっとも面白くない。
大量殺人がある。目を背けたくなるようなシーンがある。
エログロ、倫理的問題、サイコパス
実際の社会ではできないことを、せめて映像や漫画の中で見たいというのは、カタルシスそのものである。

それが名作を生み出すし、心を動かす作品を作る1つの要因にもなる。


まだこの作品は完結していない。
批判するなら、完結して全部内容を読んでからの方がいいんじゃないかなと個人的には思う。


うーん、今回は堅苦しい内容だったな。。。
まぁ難しい話題だとは思うから、私の意見が正しいとは思わない。
1つの解釈として捉えていただければ幸いです。